「M&A資金の調達事例」

本日は、飲食店舗の買収資金を調達した事例をご紹介します。

イタリアンレストランを3店舗運営しているD社の社長様より、「もっと早いスピードで出店をしていきたいが、なかなか店長が育たなくて…」とのお話がありました。私は、ご縁があればM&A等も検討してみてはどうかと提案しました。

M&Aと言っても、近年は小規模の売買事例も多くあり、中小企業でも活発に取引されるようになっております。資金運用の選択肢のひとつとして、M&Aによる買収を検討することは今後ますます増えるでしょう。

数か月後、社長様から「購入したい店舗があるので手伝って欲しい。」との連絡が入りました。

■ D社の概要
年商  :約160百万円
経常利益:約2百万円
※減価償却費6百万円

■ 買収対象店舗の概要
業態     :イタリアンレストラン
年商     :約60百万円
償却前営業利益:3百万円
売却金額   :15百万円(店舗保証金5百万円含む)

店舗の売却を希望しているのは、ITを本業とするS社です。
事業拡大のため3年前に飲食事業に進出したものの、思う様に利益を出せないので撤退したいとのことです。

D社の社長様の希望で、買収金額15百万円と運転資金5百万円の合計20百万円を銀行に申し込むことになりました。M&A資金の融資について、金融機関はどのように考えるのでしょうか。

新規出店の売上計画はあくまでも見込みですが、店舗買収の場合は実績があります。既存の売上をベースにした売上計画であれば、新規出店よりも確実性が高い計画であると判断できます。
但し、売上が現状よりも大幅に増加するという計画に対しては、新規出店の時と同様、根拠を示さなければなりません。

利益計画については、原価や販管費の削減余地を示すことで実現可能性の高い計画となります。売上は相手次第ですが、経費はある程度自身でコントロールできるからです。D社の社長様は原価と人件費に目をつけました。自身が経営しているレストランの仕入価格で計算すると、原価率は3%下がる、また、シフト管理をしっかりと行うだけで、人件費を10%削減できる、と考えておられました。

■ 買収後の見込み
年商     :60百万円(現状どおり)
償却前営業利益:6.4百万円
※原価率3%の低減により1.8百万円の利益増
※人件費10%の削減により1.6百万円の利益増

新規出店の計画よりも実現の可能性は高いと思われます。返済についても、5年返済で年間4百万円の元金支払いですので、利息を含めても十分に返済が可能な計画です。申込の結果、満額の20百万円を調達することが出来ました。

D社の社長様は規模の拡大を目指しておられます。規模の拡大は、仕入価格を下げる事ができ、人員を効率的に運用することができ、さらには良い立地を確保できるようになります。もちろん規模の拡大を全て肯定している訳ではありませんが、「資金調達とM&A」という財務戦略も、これからの中小企業には重要になるかもしれません。

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