金融機関には、それぞれ独自の判断基準があります。状況に応じて、上手にお付き合いしましょう。今回は、創業者に優しい日本政策金融公庫の創業融資基準では融資を受けられず、一方、保証協会の保証付き融資を満額受けられた事例を紹介いたします。

Sさんは飲食店を開業することが長年の夢であり、夢の実現のために着々と準備を進めてきました。

学校を卒業してからすぐに飲食業界に入り、15年間、料理からマネジメントまで多くの経験を積んできました。政策公庫の審査ポイントである業界経験は十分にあります。

また、お店を開くための資金も少しずつ貯めてきました。

政策公庫の申し込み要件である総事業費の3分の1の自己資金も有しています。

さらに、自宅で開業したいと考えていたため、立地などを入念に調べたうえで、5年前に3階建てのマイホームを3,000万円で購入しました。購入にあたっては住宅ローンを組んでいます。

いよいよ独立の環境が整い、自宅の1階で飲食店を開業する計画で政策公庫に創業融資を申し込みました。

■ 申込の概要
(総事業費)
・内装工事費 400万円
・厨房設備  200万円
・備品等   100万円
・運転資金  200万円
 合 計   900万円

(調達計画)
・自己資金  300万円
・借入    600万円
 合 計   900万円

業界経験、総事業費の3分の1の自己資金など、政策公庫の申し込み要件は十分にクリアしているものと思われましたが、政策公庫の見解は違いました。「自宅の3分の1を店舗にするのだから、自宅の購入に要した金額の3分の1(1,000万円)を総事業費に含まなければいけない。そう考えると総事業費が1,900万円となり、自己資金の要件が満たされていないと判断する。」という回答でした。

政策公庫の担当者も、「賃貸物件で出店するよりも自己所有物件で出店した方が明らかに安全性は高いと思いますけど、どうしてもこのような見方になってしまうんですよね…」と苦笑いされておられました。貸し手の要件ですので仕方ありません。

一方、保証協会の考え方は、住宅ローン返済額の2年分を自己資金から控除しますが、総事業費についてはこちらのプラン通りで結構ですとのことでした。保証協会の創業融資は自己資金の5倍まで保証して頂けるので、住宅ローン控除後の自己資金1,320千円×5倍>6,000千円となり、無事に満額を調達することが出来ました。

自分なりにしっかりと準備を進めているつもりでも、思わぬところに落とし穴がある場合があります。繰り返しますが、金融機関には、それぞれ独自の判断基準があります。

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