創業者様相談対応事例集

《 創業者様相談対応事例集 》

■〔Q&A〕その1…個人創業か法人での創業か?資本金は?
■〔Q&A〕その2…共同経営の可否は?
■〔Q&A〕その3…どんな事業での創業が良いか?
■〔Q&A〕その4…人脈・営業先開発について?
■〔Q&A〕その5…創業融資をすぐ受けるべきか?
■〔Q&A〕その6…大きなチャンス?大きな賭け?力相応か?
■〔Q&A〕その7…安売り経営は極めて難解です?
■〔Q&A〕その8…創業時の事業計画書の注意点!成功確率の高い道を歩んでください。

■〔Q&A〕その1…個人創業か法人での創業か?資本金は?

●(創業予定者A氏)
『とりあえず、個人事業でスタートしようと考えています。法人化して事業を始めるのと、個人事業者としてスタートを切るのと違いはありますか?』

◎(当事務所担当者)
『想定される取引先はどのような先ですか?』

●(創業予定者A氏)
『小規模から中堅の食品メーカー様を想定しています。』

◎(当事務所担当者)
『できるなら法人の方が良いですね。敢えて個人事業でスタートするメリットも見当たりません。個人事業者より法人の方が取引しやすい場合があります。逆はありません。』
※コメント:個人事業者との取引を嫌う取引先はありますが、個人事業者でなければならないとする取引先はありません。可能なら法人化して起業してください。

◎(当事務所担当者)
『準備できる自己資金はいくらありますか?』

●(創業予定者A氏)
『600万円ぐらい準備できます。』

◎(当事務所担当者)
『であるなら、500万円の資本金で株式会社を設立してはいかがですか?資本金は大きい方が良いです。その後の資金調達にも有利です。無理に膨らます必要はありませんが、準備できる資金があるなら、活用してください。』

●(創業予定者A氏)
『当面の生活費はどうするのですか?』

◎(当事務所担当者)
『設立した会社から役員報酬として、必要分を常識の範囲内でもらってください。』

■〔Q&A〕その2…共同経営の可否は?

●(創業予定者B氏)
『友人と共同で会社を立ち上げようと考えています。100万円ずつ3人で出し合って資本金300万円の会社を作る予定です。一方、このような関係が上手くいくのか心配してくれる方もいます。どうお考えですか?』

◎(当事務所担当者)
『3人はどんな力関係ですか?3人とも対等なのか?リーダー的な誰かがおられるのか?』

●(創業予定者B氏)
『三人とも対等の友人です。半年ぐらい前に知り合って、意気投合しました。対等にやっていこうと話しています。』

◎(当事務所担当者)
『水を差すようで恐縮ですが、一般論として近い将来意見が合わなくなる可能性が小さくないことをご理解ください。判断が割れた時に、誰の判断を正とするのか、多数決で行くのか、また、判断は「YES」か「NO」だけではなく、程度加減を伴うことが大半です。想像してください。』

●(創業予定者B氏)
『確かにそうですね。どうすればよいですか?』

◎(当事務所担当者)
『何が正解かはわかりません。このような方法でうまくやっておられる方々もおられます。ただ、上手くいかない確率が低くないということです。例えば、3人ともが別々に会社を作って、協力して進めることから始められたらどうですか?また、3社間の取引については、できるだけルールを決めておいた方が良いですね。』

■〔Q&A〕その3…どんな事業での創業が良いか?

●(創業予定者C氏)
『創業の準備を始めています。一年後を目安に創業します。事業構想中です。意見を聞かせてください。』

◎(当事務所担当者)
『経歴を詳しく教えてください。』

●(創業予定者C氏)
『約20年間食品卸に関する業務に取り組んできました。…略…』

◎(当事務所担当者)
『これだけのキャリアを積んでおられるのであれば、過去の経歴の延長で考えることがまず基本です。この分野の中で、自分自身が得意な分野、市場が伸びている分野に集中して考えてみてください。また、この分野での人脈も整理してください。』
※まったく新しい分野で起業して成功される方も少なくありません。ただ、過去の経験の延長線上で起業される方が、より成功確率は高くなります。

■〔Q&A〕その4…人脈・営業先開発について?

●(創業者D氏)
『2か月前に創業しました。日々、販売する商材と人脈を求めて駆け回っています。なかなかいいアイデアとご縁が見つかりません。』

◎(当事務所担当者)
『アイデアやご縁を外に求めすぎてはいけません。まずは、自分のキャリアを整理してください。何が得意なのか?何ができるのか?何をしたいのか?まずは、仮説の立案が先です。私はこんなことをしたい、こんなイメージ…この思いを持ったうえで、その仮説を検証するために動きましょう。やみくもにご縁を求めても、自分にとって本当に必要なアイデアやヒントは見つかりません。』

●(創業者D氏)
『名刺はたくさん集まりましたが。』

◎(当事務所担当者)
『本当に必要な名刺の数は、多分十枚から多くて数十枚でしょう。量より質です。動き過ぎずに、一人で考える時間を増やしてください。動く、動く、動く…ではなく、考える、考える、動く、考える、考える、動く、こんなイメージで行動してください。』

■〔Q&A〕その5…創業融資をすぐ受けるべきか?

●(創業予定者E氏)
『小さなお店を開業します。貯金と親からの援助を合わせて800万円あります。とりあえず手持ち資金だけで事業をスタートしてみようと思っています。』

◎(当事務所担当者)
『半年後に黒字化する計画ですね。黒字化が遅れたら、資金不足に陥りますね。』

●(創業予定者E氏)
『予定通り立ち上がらなかったら銀行に融資をお願いしようと考えています。それに、「借り入れはできるだけするな」と言われています。』

◎(当事務所担当者)
『資金不足に陥った時点で融資を依頼するのと、現時点で融資を依頼するのとでは、後者の方がはるかに借りやすいですよ。また、ぎりぎりの資金計画で開業するよりも、今資金を調達して、資金に余裕を持って経営した方が楽ではないですか?困った時に借入れができないリスクを取るより、今借り入れを起こして金利を払って、使わずに銀行口座に残しておく方法を推奨します。』
※「借入れは絶対しない」この決意なら別ですが、「困ったら借りよう」この気持ちがあるなら困っていない今のうちに融資を受けてください。「困った時には借りにくい」この理屈を理解してください。
金融機関にあるのはすべて「日傘」です。「雨傘」はありません。

■〔Q&A〕その6…大きなチャンス?大きな賭け?力相応か?

●(創業者F氏)
『大きなチャンスがきました。この仕事がうまくいけば、一気に事業が立ち上がります。』

◎(当事務所担当者)
(創業10ヵ月目、月商200万円(粗利益100%)の工事請負業様です。)
『少しずつ順調に立ち上がってきましたね。今回受注できそうな仕事は、8,000万円・工期4か月の元受工事ですね。粗利益率はどれくらいですか?』

●(創業者F氏)
『20%ぐらいです。』

◎(当事務所担当者)
『売上高8,000万円、粗利益額1,600万円、原価(外注費)6,400万円になりますね。どこかでつまずいたら致命傷になります。大丈夫ですか?』

●(創業者F氏)
『どんなリスクがありそうですか?』

◎(当事務所担当者)
『施主さんからの支払いが遅れる、途中で設計変更が入って工期がずれる、また、当社の下請けさんの都合で工期が遅れて入金が遅れる等、何かが起きたときに当社に余裕が全くありません。』

●(創業者F氏)
『経営にはリスクが伴うものではないのですか?』

◎(当事務所担当者)
『これは健全なリスクと言うより、一か八かに近い不健全なリスクに見えますがいかがでしょうか。』
『元受は大きな会社に譲って、有利な工事を部分的に請け負ったらどうですか?』
※リスクには、「力相応のリスク」と「力不相応のリスク」があります。経営上のリスクは、「力相応のリスク」の範囲に留めてください。

■〔Q&A〕その7…安売り経営は極めて難解です?

●(創業予定者G氏)
『ラーメン屋さんの開業準備中です。注意すべき点をアドバイスしてください。』

◎(当事務所担当者)
『貴店の特徴・差別化のポイントを教えてください。』

●(創業予定者G氏)
『おいしいラーメン屋さんはたくさんありますが、けっこう値段が高いように思います。安い値段、できればワンコイン(500円)以下で、おいしいラーメンをおなか一杯食べられる店にしたいです。』

◎(当事務所担当者)
『他店より安いのにおいしいラーメンを作れる理由を教えてください。』

●(創業予定者G氏)
『……沈黙……』

※「良いものを安く」これは概念であって実体ではありません。論拠なく「良いものを安く」提供したら、上手くいかなければ売れない、上手くいっても繁盛貧乏、いずれも成功ではありません。中小企業が低価格を狙う時、商売はほぼ失敗します。やめてください。

■〔Q&A〕その8…創業時の事業計画書の注意点!成功確率の高い道を歩む

45歳の創業予定者様からのご相談です。自己資金200万円、創業融資希望額200万円、創業補助金希望額200万円、創業補助金の使途は主にWEB開発とWEBプロモーションです。
WEB開発とプロモーション投資で300万円を予定しています。
立派な?事業計画書も持参されました。
・WEB受注で初年度年商1,500万円、利益100万円。
・人を増やしながら3年後には年商6,000万円、利益500万円。
細かい与件もびっしり書かれた緻密な計画書です。

●(相談者)
『社員教育のコンサルタントを始めます。私は、某大企業で教育担当をしていました。新入社員から幹部候補生まで、幅広く対応できます。実績をあげてきました。コンテンツもたくさん持っています。ホームページを立ち上げて受注します。』

◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』

●(相談者)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注します。』

◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意ですか?』

●(相談者)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』

◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』

●(相談者)
『すべての業種が対象です。』

※成功確率の低い創業になりそうです。成功確率を高くする施策が必要です。

そのためには、

1.サービスを限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意ですか?』
●(相談者)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』
テーマ・分野の絞り込みが必要です。

2.営業対象を限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』
●(相談者)
『すべての業種が対象です。』
営業対象の絞り込みが必要です。

3.空中戦の営業に打って出る前に、地上戦で勝負してください。
◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』
●(相談者)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注します。』
まずは、前職ルートをうまく活用した営業、縁故の営業から始めるべきです。

4.投資のバランスに注意
◎(当事務所担当者)
『WEB開発もWEBプロモーションも悪くありませんが、資本金200万円の会社が、このタイミングで300万円』(内200万円は創業補助金狙い)の投資を行いますか?確信はありますか?』
●(相談者)
『そうかもしれません。』
創業補助金ありきではなく、本当に必要なWEBを立ち上げて、最小限のプロモーションから始めることになりました。

事業計画書を作り直してもらっています。

  1. 教育分野の中の、本当に強いテーマに絞って、商品化してもらいます。
  2. 上記のテーマに合いそうな営業先に絞り込んだリストをまず100社探してもらいます。
  3. 縁故先企業を、30社探してもらいます。
  4. 1のテーマで、2を対象にしたWEBを低コストで開発します。同時に足で受注に走ってもらいます。
    対象を限定したDM等も検討してもらいます。
    創業補助金の申請は、一旦見送りました。創業融資は可能な限り上限を狙います。

新しい指針の事業計画でも、数値計画は当初と同程度狙えます。足元から地道に攻めることは、決して遠回りではありません。むしろ近道です。
また、創業融資や(創業補助金)申請時には、新しい指針の方がはるかに高い評価を得られます。

×『大きくなるためには、大きなマーケットを幅広い商品・サービスで攻めることが良い』と勘違いしている人は少なくありません。これは、明らかな間違えです。

○『大きくなりたいなら、敢えて絞り込んだマーケットを特化した商品・サービスで攻めるべき』と理解してください。

貴社は大丈夫ですか?再度確認してください。

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