日本政策金融公庫の創業融資事例 …自己資金要件緩和後の現場の実態をレポートします

『日本政策金融公庫の創業融資事例』 

自己資金要件緩和後の現場の実態をレポートします。

今年から日本政策金融公庫の創業融資の自己資金要件が緩和されました。

従来は総事業費の3分の1以上の自己資金を有していることが条件でしたが、現在は10分の1に大きく緩和されています。しかし、実際の運用面では、100万円の自己資金で900万円の創業融資を受けられる確率は低く、従来どおり3分の1の自己資金が目安となっているようです。この様な状況下において新基準で融資を受けられたケースをご紹介します。

弊所にて関与させて頂いた飲食店の独立開業案件です。300万円の自己資金で1,000万円の創業融資を受けました。

弊所関与先であるM社に勤務するKさんから、独立開業のご相談がありました。

M社は飲食店を複数店舗経営しており、KさんはS店の店長を務めています。

「500万円の貯蓄はあるが、全額を事業につぎ込むのは不安がある。300万円だけ事業資金とし残りは融資を受けたい。いくらぐらい融資を受けられそうか?」との質問でした。

Kさんが当初考えていた総事業費は、運転資金も含めて1,500万円でした。よって1,200万円が必要調達額となります。

新基準に照らし合わせた表面上の借入可能額は2,700万円となりますが、実態は従来どおり自己資金の2倍程度までしか融資が出ないケースが殆どです。

実情をお伝えし、借入金を600万円に抑え、自己資金300万円とあわせて900万円で事業構想を練り直してみてはとご提案しました。Kさんは構想を練り直しましたが、結論は、やはり900万円では満足のいく店舗が作れないとのことでした。

そもそも、なぜ自己資金の要件があるのでしょうか?いくつか理由はありますが、売上が本当に立つかどうかも分からない新規事業に対して、返済が必要な借入金よりも、返済不要な自己資金を充てた方が安全だからです。では、既に売上や利益の実績がある店舗の買収ならばどうでしょう。新規事業に比べて各段に事業リスクは下がります。

自己資金の必要性も低くなります。

K氏と相談し、新店舗ではなく、K氏が現在店長を務める店舗を買い取る計画に切り替えました。

元々3,000万円程度の資金を投入している店舗で、K氏はオープン当初から10年近く店長を務めています。功労者であるK氏の申し出に対し、社長は前向きに検討してくださいました。結果、店舗設備及び権利を720万円で売却してもらえることになりました。

■ 最終的な投資及び調達の計画

【投資計画】
店舗敷金180万円、店舗買収資金720万円、店舗改装費150万円、運転資金250万円、投資合計1,300万円

【調達計画】
自己資金300万円、借入1,000万円、調達合計1,300万円

日本政策金融公庫との面談時に、やはり、総事業費に対する自己資金の少なさが指摘されました。対象店舗の過去2期分の損益実績を提出し、1,000万円の返済が十分に可能であることを説明した結果、自己資金の3倍強となる1,000万円の融資を受けることに成功しました。

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