「勘定合って銭足らずという言葉」があります。利益は出ているのにお金が無いという状態です。
なぜそのような状況に陥るのでしょうか。まずは運転資金のメカニズムを見てみましょう。
■ 運転資金のメカニズム
以下のような収益構造の会社があります。
利益が出ている優良企業です。
◆今月の売上高100万円-仕入高70万円-経費20万円=利益10万円
この企業の取引条件は以下です。
・売上100万円の回収は翌月の末
・経費20万円の支払日は翌月の10日
・仕入70万円の支払日は翌月の20日
売上金を回収するより先に経費の支払日が到来しますので、90万円(経費20万円+仕入代金70万円)の資金を一時的に立て替える必要があります。これが運転資金です。
売上が伸びるとどうなるでしょうか。
◆今月の売上高200万円-仕入高140万円-経費40万円=利益20万円
売上を回収するまで立て替えなくてはならない金額は180万円となります。売上を伸ばせば伸ばすほど、自己資金では耐えられない立替金が必要になりますので、経営者は「銀行からお金を借りるか」「事業規模の拡大をあきらめるか」と言う選択を迫られることになります。
■ 借金は出来るだけしない方が良いのか
経営者の中にも「出来るだけ借金はしない方が良い」と考えている方がたくさんおられます。しかし、運転資金の借入は、売上が入金されるまでの間をつなぐ、比較的安全性の高い借入です。
借金は目的では無く手段です。鉄道事業、通信事業などの大きな資金を要する事業は、かつて国営でした。
資金の原資は税金です。
現在は、金融サービスの発展に伴い、事業意欲と能力があれば、個人でも大きな資金を集めることが可能な時代です。せっかく大きな売上をあげる能力を有しているのですから、金融を上手に活用して、事業を大きく育ててみてはいかがでしょうか。
もちろん経営方針は様々だと思いますが、事業規模を拡大したいと考えておられるならば、金融を活用することを過度に恐れていては、目的を達成することは難しいと言えます。
■ 運転資金は前もって調達しておく
事業を大きくしたいという思いと、出来るだけ借金をしたくないという思いから起こりうる現象として、「資金が本当に必要になるまで借入に動かない」ということがあります。
結果的に無計画なファイナンス活動に陥ります。
前述の企業の場合、財務的な知識があれば、売上を伸ばせば伸ばすほど資金が不足することは、事前にわかります。資金調達は切羽詰るほど難しくなりますので、営業に精を出すより前に、資金を準備しておくことが先決です。
但し、「勘定が合わない銭足らず」は赤字資金です。
明確な返済原資の無い危険な借入れです。雪だるま式に借入が膨らんでしまう可能性がありますので、慎重な検討が必要です。
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