銀行借入時に経営者保証が不要になります

先日、金融庁・近畿財務局、中小企業庁・近畿経済産業局主催の説明会に参加して参りました。説明会のテーマは「経営者保証に関するガイドライン」についてです。

日本の中小企業経営者、中小企業金融にとって大きな転換点になりそうな制度改正です。背景を理解していただくため、まずは昨年5月17日、安倍晋三内閣総理大臣のスピーチを引用します。

◆ 安倍総理「成長戦略第2弾スピーチ」個人保証部分抜粋
ひとつひとつの規模は小さいながらも、経済の活力の源である、ベンチャー企業への投資も極めて重要です。
 
日本のベンチャー精神を阻んでいるものとは何か?
 
それは、「個人保証」の慣行です。個人保証に関する調査によれば、借り入れを行っている中小企業・小規模事業者では、およそ9割に個人保証がついています。規模の小さい事業者であれば、ほぼ必ずついているといってもいいでしょう。そして、このうちの7割は、個人資産と同じか、それを上回る金額の保証をさせられているのです。一度失敗すると、すべてを失う、ということになります。
 
これでは、再チャレンジなどできません。経営の経験やノウハウが、一度の失敗でうずもれてしまうのは、国家全体の損失と言ってもいいでしょう。ベンチャーがどんどん生まれ、投資であふれるような日本をつくるためには、「個人保証」偏重の慣行から、脱却しなければなりません。
 
モラルハザードは防止しなければなりませんが、個人の資産と会社の資産を区分して、しっかり管理しているような真面目な経営者であれば、個人保証がなくとも融資が受けられるような、中小企業・小規模事業者向け金融の新たな枠組みをつくりたいと考えています。一度や二度の失敗にへこたれることなく、むしろその経験を活かして積極的に起業していただき、新たな分野を切り拓いてもらいたいと考えています。(引用終わり)
 
これまで、中小企業が銀行から融資を受ける際には「経営者個人の保証」を必ず求められてきました。
「真面目に経営をしてもらうため」「会社と経営者は一体であるため」「いざという時の担保となるため」「決算書類の信頼性を約束してもらうため」というのが銀行側の理由のようです。
 
しかしながら、安倍総理が指摘している点も含め、以下のような弊害もあるようです。
 
・経営者保証に依存して、銀行側は事業を真剣に審査していない。
 企業側も自社の情報を的確に開示する義務を怠っている。
・融資時の経営者保証が当たり前になっており、経営者は個人資産を大きく上回る保証債務を負担している。
・経営者保証があることで、銀行と企業が信頼関係を構築する意欲を阻害している。
・経営者保証があることで、創業、成長・発展、早期の再生着手、円滑な事業承継等、事業取組の意欲を阻害している。
 
このような背景から、経営者保証に頼らない資金調達を促進するために「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。ガイドラインの詳細は、中小企業庁のホームページで確認頂くとして、ここでは要点だけを説明致します。
 
◆ 経営者保証が不要になる要件
会社が、経営者保証を提供することなしに資金調達を希望する場合は、以下のような経営状況であることをガイドラインは求めています。
 
・法人と経営者個人の関係を明確に区分・分離していること
・法人の資産や利益だけで返済できるよう法人の信用力を強化すること
・信頼性の高い情報を銀行に開示・説明すること
 
ご覧頂いたように、制度の恩恵を受けるためには、財務管理体制の整備が必須です。法人と個人のお金を明確に分ける運用はもちろん、試算表、資金繰り表、経営計画書など、財務管理資料の作成・提出が必要になります。
 
その際、「税理士等の外部専門家により、正確性の検証が施されているものが望ましい」とも記載されており、私たち税理士事務所の役割も非常に重要です。
 
本ガイドラインは、今月(平成26年2月)から運用が始まったばかりです。銀行実務の変化を見守ります。
しかし、銀行対応を強みに掲げる当事務所がお役に立てることは多いと思います。
経営者保証についても、当事務所にご相談下さい。

 

〇 銀行対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会正会員事務所である当事務所にて承っております。
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〇 本情報の信頼性の向上には最善を尽くしていますが、その正確性を保証するものではありません。